合掌

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菅野沖彦、逝く

 菅野先生が逝去されました。この数年、仄聞するところでは体調の不良が続いていたということでしたが、ついにこの日を迎えてしまいました。30数年前、SS誌のベストオーディオファイルで取材を受けて以来、すべてを思い出せないほど、幾度となくご自宅の音を聴かせていただきました。最後の日には、イコライザー使用のヒントをかなり具体的に御教示して下さいました。細君も二度ほど同伴させていただきました。
 大音量でうるさくならない広大な音場、浮かびあがる音像のリアリティ…… 圧巻でした。いつか超えて見せる、と心に誓いここまできました。一瞬かすったか、と思えたこともありましたが心の師の背中がまた遠ざかり、置き去りにされる、ということの繰り返しでした。あの日、聴かせていただいた演奏、目の前に見えるステージ、そこに横たわるコンサートグランド、左手の低弦の重厚にして先鋭、鮮明な響き、乱れのない定位は忘れられない思い出であり、目指す目標でもあります。オーディオ評論の世界において一つの世界を確立されたその孤高の領域はその後、誰一人として到達しえない巨峰であったことに、いまになって思い至る次第です。
 合掌。

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