生音のしなやかさとオーディオ的デフォルメの交錯する瞬間 – 3

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録音のマジック

 かつて、レコーディングエンジニア・1級音響技術者の及川 公生さんはこう言われていました。
「ジャズは特有の聴かれ方があり、これが録音(ライブ録音も含む)でもSRのサウンドでも全てを支配している。それはジャズ特有の楽器バランスであり、楽器の音である。その極めて特殊な聴かれ方の根底は、ブルー・ノート・レコードの巨匠ルディー・バン・ゲルダーの録音によるものだ。実際の演奏場所ではありえない特殊な楽器バランスがジャズを聴くものを虜にし、それがジャズサウンドとなってしまった。ベースは実際に聞こえるバランスよりさらに強調され、かなりの存在感を感じる。そして、極め付けはサックス、トランペット、トロンボーンなどのホーンセクションである。オン・マイクの効果を劇的に活かしたナマよりナマらしいサウンドの録音で、これがジャズ・ファンを魅了した。こうして植え付けられたジャズの聞き方は、リスナーに留まらず、ミュージシャンにも浸透したのである」
 この発言の意味は絶大です。録音の段階で行われる『デフォルメ』についての言及です。これはジャズだけのことではありません。クラシックをはじめとするあらゆる音楽の録音現場で行われてきた現実です。『デフォルメ』についての冷静なまなざしが、再生サイドに求められる所以でしょうか。

《 続く 》

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